徽州曹素功　藝粟斎

新老坑端溪硯について

現在の市場では見ることがまれな、良質な新老坑の端渓硯です。新老坑は歴史ある斧柯山の老坑水巌坑洞に近い場所で石脈が発見され、1970年代から80年代にかけて多くが採石されました。戦後になって新たに開鑿された端渓の諸硯坑の中でも質量ともに優れており、歴代の名坑の中でも老坑水巌に次いで良質な硯材という評価があります。 現在は斧柯山の旧坑洞が完全に閉鎖され、採石が中断されております。その影響で、良い材質の硯は市場で年々少なくなってきています。

新老坑硯の鋒鋩は老坑水巌に迫る細潤なもので、その性質は非常に稠密かつ堅牢です。磨墨における性能は老坑水巌に次ぎ、坑仔巌や麻子坑の旧坑良材に並ぶ極めて優秀な硯材なのです。

特徴として密生した強靭な鋒鋩を持ち、和墨から唐墨まで、さまざまな種類の墨を容易に溌墨させることができます。磨る墨を選ばない汎用性という点では、老坑水巌よりも優れた実用性を持っています。多少新しい油煙墨であっても、膠によって粘ることなく、光沢豊かで滑らかな墨液を得る事が出来るでしょう。

硯石によっては、金線、氷紋、水線、蕉葉白、魚脳砕凍、青花、天青、稀に石眼といった、老坑水巌に似た石品をもつものもあります。良い墨を使って長年使用することにより、よりいっそう風合いを増してゆくでしょう。