徽州曹素功　藝粟斎

■寸法（不定形のため目安としてください）
縦辺：10cm
最大幅：7cm
厚さ：1cm

■硯材：現在の市場では見ることがまれな、良質な新老坑の端渓硯です。新老坑は、1970年代から80年代にかけて採石されました。戦後になって開鑿された端渓の硯坑の中でも、老坑水巌に次いで良質な硯材という評価があります。現在は採石が中断された影響で、良い材質の硯を市場で見ることは稀になりました。

■性質：新老坑硯の鋒鋩は、老坑水巌に迫る性能を持ち、その性質は非常に稠密かつ堅牢です。磨墨における性質は老坑水巌に次ぎ、麻子水坑などに並ぶ極めて優秀なものです。 密生して強靭な鋒鋩を持ち、和墨から唐墨まで、さまざまな種類の墨を容易に溌墨させることができます。多少新しい油煙墨でも、膠によって粘ることなく、光沢豊かで滑らかな墨液を得る事が出来るでしょう。

■石品・石色：赤紫色の、いかにも端溪らしい地色をしています。硯面から硯背にかけて、老坑の眷属であることを表わす氷紋が横断し、縦方向には数条の金線が現れています。老坑にせまる、温潤な佳材であるといえるでしょう。

■作硯：墨池に一匹の愛らしいヤモリが刻されています。ヤモリは日本でも害虫を食べてくれ、家を守る生き物とされています。中国でも壁虎と呼ばれ、幸福をもたらす生き物として親しまれてきました。 このヤモリを取り囲むように瑞雲が描かれ、また瑞雲から竹葉が下がっています。竹葉は”四君子”のひとつ、節操の高い君子の徳を表しますが”竹報平安”という言葉もあり、生活の平安を無病息災を祈念する吉祥図でもあります。瑞兆を表わす巻いた瑞雲から竹が下がり、また家を守るヤモリがたたずんでいるこの作硯の意図は明らかでしょう。 墨堂は古硯を思わせる浅いながらも巧みな刻線、硯背には天然ゆかりの石皮が残されています。

■使用：良質な墨を磨って用い、仮名や水墨画、写経などの小字を書かれる際には丁度良い大きさです。良い墨を使って長年使用することにより、よりいっそう風合いを増してゆくでしょう。

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